Z Notes Blog by Jim Zumwalt
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松室さんの物語

(2009年7月16日)

 先日、山口県を訪れた際に、本当に素晴らしい方にお会いしました。御年79歳の元日本兵、松室将幸です。松室さんは、日本人の目から見た太平洋戦争を米海兵隊員が知るために役立てばと、米海兵隊岩国基地でボランティアとして講演活動を続けておられます。

 松室さんは若くして旧日本海軍に入隊し、米海軍の艦船を目標に攻撃する「神風特攻隊員」としての訓練を受けました。松室さんが「最期の任務」のための訓練を日本で受けていたころ、海兵隊員だった私の父はノースカロライナ州に駐留し、所属部隊とともに上陸訓練を開始していました。1945年の夏、父の部隊はサンフランシスコに移動することになりました。そこで父が受けた命令は、米軍の九州侵攻作戦に参加するというものでした。幸運にも、松室さんも私の父も、その任務を遂行することなく終戦を迎え、2人とも生き残りました。けれど悲惨なことに、松室さんは広島の原爆投下で、ご家族全員を亡くされました。

 松室さんがどれほどの苦しみを味わったのか、私には想像することもできません。お会いする前、どんな方なのか気になっていました。お会いしてみると、活力に満ち、つらい経験をしたことなど少しも感じさせない、にこやかな方で驚きました。終戦後、テキサス州出身のある海兵隊員と知り合い、お互いに生涯の友人となった、というお話を伺いました。さらに驚くべきことに、松室さんは米国で学ぶ道を選び、5年間米国に滞在したそうです。米国滞在中、アメリカ人のボランティア精神に感銘を受けた松室さんは、それ以来、山口県で、地域の社会福祉活動に積極的に参加しています。また、松室さんの話では、ご自分のお子さんたちを全員テキサス州に留学させたそうです。そのときに身元引受人になってくれたのは、あの元海兵隊員の友人でした。

 憎しみ合う敵同士が友人になるという松室さんのお話は、これまで1世紀にわたり日米関係が歩んできた驚くべき道のりそのものです。私の父や松室さんの後に続く日米両国の若い世代には、あの恐ろしい戦争の記憶はありません。それでも、親の世代が、憎しみや不信感を乗り越え、協力できるようになったことを、私たちは忘れるべきではありません。だからこそ、松室さんが岩国基地に足を運び続け、アメリカと友好関係を結ぶに至った、その感動的な道のりについて、若い世代の米海兵隊員に話をしていただくことをとてもありがたく思っています。日米両国の次の世代も、お互いの国について学び、同様の緊密なきずなを結ぶことができるようにしていく必要があります。

ではまた次回。

ジム

COMMENTS

文明さんからのコメント:

感動するお話をありがとうございました。

戦争という人類にとって不幸なことですが、戦争の悲劇を語ることも重要ですが、このような心が温まるお話で人を感動させることが世界平和の近道ではないかと思います。

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