Z Notes Blog by Jim Zumwalt
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夏草や

(2009年9月8日)

芭蕉の俳句が刻まれた毛越寺の句碑の前で

 「夏草や兵どもが夢の跡」―奥州路の旅で平泉を散策中、アンと私はこんな俳句が刻まれた石碑を見つけました。この句碑は、毛越寺(もうつうじ)南門のすぐ外にあります。私たちを案内してくれた、とても親切な僧侶から伺った話では、刻まれた筆跡は、日本の最も有名な俳人・芭蕉の真筆を写したものだそうです。

 美しい浄土庭園に目を奪われていると、案内役の僧侶から、12世紀には、この広大な敷地を持つ寺で500人もの僧侶が寝食を共にしており、活気がみなぎっていた、という説明がありました。奥州藤原氏の滅亡後、度重なる火災で、境内にあった建物の多くが焼失してしまいました。芭蕉が平泉まで足を運んだ16世紀には、この美しい浄土庭園や史跡は、かつての栄華の名残りをとどめているにすぎませんでした。このことに思いを巡らすと、アンも私も、芭蕉がこの句を詠んだ時に感じたに違いない悲しみが分かるような気がしました。

 中尊寺では、別の僧侶にお会いしました。彼は、ご自身が地元出身だと話してくれました。1124年に完成した荘厳な金色堂を見学したときに、この僧侶は、この歴史ある場所で過ごした少年時代のことを少し話してくれました。多くの点では、ほかの子供たちと同じような少年時代を過ごしました。新雪の降り積もった山道を、そりで学校へ通った記憶があるそうです。けれども、幼いころから、自分の生まれ故郷が特別な場所だということは分かっていたそうです。というのも、子供のころに地面に穴を掘ると、古めかしくて貴重なものをよく見つけたからです。そのため、この寺とその美しい境内を守ろうと、彼は一生懸命がんばっています。

中尊寺の工芸品

 日本には長く、栄光に満ちた歴史があることを、アンも私も理解しています。戦乱や天災により、こうした歴史の、こんなにもたくさんの部分が破壊されてしまったことへの芭蕉の悲しみを分かち合うと同時に、日本の遺産の価値を認め、それを守っているこの僧侶のような人たちにお会いできることを、いつもうれしく思っています。

ではまた次回。

ジム

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