Z Notes Blog by Jim Zumwalt
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鉄と炎の芸術

(2011年9月9日)

 私は先月、刀匠・松永源六郎さんを訪れ、日本刀作りを見学してきました。松永さんの鍛錬所(工房)は熊本市からおよそ1時間ほどの荒尾市にあり、そこへおじゃますると、すでに火の入った火床と呼ばれる炉から真っ赤な炎が立ち上っているところでした。松永さんはちょうど、玉鋼(たまはがね)という地鉄の塊を加熱している最中で、玉鋼は白熱した状態になっていました。松永さんが近くの海岸で採取したという砂鉄も見せていただきました。この砂鉄を玉鋼の塊に製鉄し、作刀に使うというお話しでした。「重さ1キロの日本刀一振りを作るにはだいたい9キロの鉄が必要」と松永さんはおっしゃっていました。

 松永さんは高濃度の炭素を含んだ玉鋼を厳選し、それを鉄製の長いテコ棒の先につけ、火床に入れて加熱します。その際、ふいごで炉内に風をそっと送り込み、炭火を調節します。火床に入れた玉鋼が鍛錬できる状態になっているか、その頃合いを計る方法を松永さんに伺うと、「玉鋼の温度はその色や飛び散る火花の数で正確に判断できる」ということでした。

日本古来の匠の技を説明する刀工・松永源六郎さん(手前)

ジェイソン・クーバス在福岡米国領事館首席領事(手前左)と日本刀の製作工程を見学する私(手前右)

 火床から白熱した鉄の延べ棒を抜き出すと、これを濁った水の中に浸けて「焼き入れ」をしてから稲わらの灰で包みます。この工程で鉄の含有炭素量が増し、鉄を鍛えて鋼にしやすくなるという説明でした。松永さんが鉄の棒を叩き始めると、鮮やかなオレンジ色の火花が飛び散ります。数メートル離れて座っている私のところにまでその熱が伝わってきました。大槌で地鉄を荒打し、鉄の棒をその2倍の長さになるまで打ち延ばします。

この剣士は見事な技の持ち主でした

私にも難なく畳表の柱を斬ることができました

 次に、打ち延ばした鉄の延べ棒を半分に折り畳み、元の長さと厚さになるまで鍛えます。それからこの鉄の棒を火床に戻して再加熱する作業に移ります。鍛錬、打ち延ばし、折り畳みを何度も繰り返す、この一連の工程で鋼の分子が揃い、より強靭でしなやかな日本刀が出来上がるそうです。

 その後、松永さんから日本刀の斬試(ざんし)の見学を勧められました。白い袴姿の男性剣士数人がそれぞれ、松永さんが製作した真剣を使い、丸めた畳表を切り落とす腕前を披露してくれました。剣士の皆さんの技をじっくりと見せてもらうと、今度は私にも「ご自分で日本刀の斬れ味を実際に試してみませんか」と声をかけていただきました。日本刀の名工が丹精を込めて作り上げた一振りの試し斬り体験ができるなんて、まさに光栄至極でした。

ではまた次回。

ジム

COMMENTS

ジム様

日本には昔?このような匠な忍耐力・集中力・礼儀を重んじる謙虚な精神があったのですね。 姿勢を正し、忍耐強く己の前にあるものへ向かおうと考えます。エイッ!

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