Z Notes Blog by Jim Zumwalt
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日本の若き指導者と起業家たち

(2009年6月26日)

 6月20日(土曜日)、私は日本青年会議所(JCI)にお招きいただき、安倍晋三元首相と共に、日米安全保障同盟の未来についてJCIの幹部の皆さんにお話ししてきました。会場では、日本の若き起業家の皆さんの活力と熱気を肌で感じました。全47都道府県のJCIの幹部の皆さんが、この討論会に参加するために東京に来られたことを知り、私は深い感銘を受けました。150人近い参加者が集まった討論会の会場には、日本が直面する重要な政策問題について学ぼうとする活力と熱意が満ち溢れているようでした。

 安里繁信会頭からは、地域の平和と安定を確保する上での日米同盟の役割、日米安全保障条約、そして北朝鮮や中国についてご質問がありました。私がそこで指摘したのは、日米安全保障条約は半世紀近くにわたって存続してきたが、これは日米同盟に対して日米双方が寄与したからであり、ひいては日米双方に利益をもたらしているからである、という点です。米国は、日本を守るため、そして地域の潜在的脅威を抑止するために、自国の兵士を故郷から遠く離れたこの地域に送ることに同意しています。一方、日本は、米軍が駐留する基地を提供し、在日米軍駐留経費の一部を負担しています。また、民主主義や人権に対する信念といった価値観を共有しているからこそ、日米両国は幅広い分野で協力し合える関係にある、ということも申し上げました。また、安倍元首相からは、日米同盟がこれまで存続することができたのは、相互の信頼関係があるからだ、というご指摘がありましたが、私も同感です。

 JCIから私への質問とそれに対する私の回答は以下のとおりです。皆さんのご意見をぜひお聞かせください。

ではまた次回。

ジム


1.日本の将来像と日米同盟の重要性についてお聞かせください。

 クリントン国務長官も今年2月の訪日の際に述べましたが、日米同盟は米国の外交政策の要です。日米同盟は、日米両国のみならず、アジア・太平洋地域、そして世界の平和と繁栄にとっても極めて重要です。日米両国の協力関係の歴史は半世紀近くにまで及び、2010年には日米同盟50周年を迎えます。これまで日米同盟の基礎となってきたのは、両国に共通の安全保障に対する責任であり、これは今後も変わることはありません。しかし、日米同盟はまた、自由、民主主義、人権といった共通の価値観に対する相互尊重に基づくものでもあります。

 日米同盟を裏付ける条約は「(日本国とアメリカ合衆国との間の)相互協力及び安全保障条約」と呼ばれています。日米同盟は日米双方の貢献を必要とするからです。いずれもこの安全保障条約の下で義務を有し、いずれも等しく利益を受けています。安全保障条約第5条に基づき、米国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃という共通の危険に対処するために、日本と共に行動することに合意しています。第6条では、日本が、「日本国の安全に寄与し、並びに(極東)地域における国際の平和及び安全の維持に寄与するため」に、米軍の使用のために基地を提供することで合意しています。安全保障条約が適切に機能し、両国に利益をもたらすためには、第5条と第6条に基づき、日米双方がそれぞれ自国の義務を果たす必要があります。

2.日米地位協定の問題点について、またその問題に対する政府の取り組みについてお聞かせください。

 日米地位協定が締結されたのは1960年のことですが、それから現在までの間に、地位協定の運用は変わり、改善されています。日米合同委員会が問題を検討し、地位協定の実施の仕方について、必要であれば相互に修正に合意しています。その一例として、合同委員会の合意事項として、米国は、凶悪犯罪事件で日米地位協定の管轄下にある米軍人・軍属等が被疑者の場合には、一定の要件が満たされれば、その身柄を起訴前に日本側に引渡すことに同意しています。さらに、米軍基地所在地の都道県でつくる渉外知事会と日米両国政府との連絡会議が2008年12月に第1回の会合を開き、意思疎通の向上と在日米軍の安定的な駐留のために、相互に関心のある問題を話し合う仕組みが確立されました。

 日米地位協定について、いくつかの誤解が日本国民の間にあるようです。そのひとつは、米軍兵士が罪を犯しても罰せられないように、日米地位協定が彼らを守っている、というものです。これは事実とは異なります。日米地位協定の管轄下にある米軍人・軍属等が被疑者であるすべての犯罪事件の捜査で、米軍当局は日本の捜査当局に積極的に協力しています。日米地位協定にまつわるもうひとつの誤解は、米軍が日本の環境に関する規則には従わなくてもかまわないと協定で認められている、という点です。これも事実に反しています。実際には、在日米軍基地では、日米両国の環境規制を検討して、より厳しい方に従っています。

3.日米安全保障条約の重要性と問題点についてお聞かせください。

 先ほども触れましたが、日米安全保障条約は2010年に50周年を迎えます。これは注目に値する出来事です。簡単に言うと、日米安全保障条約は日米同盟の法的根拠であり、日本国民の安全を保障し、地域の安定を確保しています。日米同盟が半世紀にわたりアジアの平和を維持してきたことによって、日本は安全で安定した環境を得て、経済的に強く活力のある民主主義国家になることができたのです。冷戦が終わった今も、北東アジアの安全保障情勢は依然として緊張状態が続いています。日米いずれも、この同盟に寄与する必要がありますが―例えば、米国の若い兵士たちは、日本にいる私たちを守るために、故郷を離れなければなりません―日米同盟は今も平和を維持するために不可欠な力となっています。

4.トランスフォーメーション(米軍再編)の最たる目的をお聞かせください。

 日米同盟に基づく緊密な協力関係は、地球規模の問題に効果的に対処する際に重要な役割を果たします。また、こうした協力関係は、安全保障環境の変化を反映して進化していかなければなりません。日米両国は、日本本土と沖縄の地元住民へ及ぼす影響を軽減しながら、抑止力と能力の強化を進めるという共通の責任を踏まえ、在日米軍と自衛隊の態勢の再編に合意しました。日米双方とも、同盟に対する日米両国民の支持を高めることの重要性、そしてそれが持続可能な同盟関係の役に立つことを認識しています。

5.北朝鮮が4月に発射した飛翔体に対する事前の情報、また当日の情報提供が韓国に比べ日本に対して十分に行われなかったという報道がありましたがその真意をお聞かせ下さい。

 情報提供に遅れはありませんでした。日本政府とは発射の数週間前から緊密な連絡体制をとっていました。差し迫ったミサイル発射に関する北朝鮮のメッセージは、日本政府へ事前に伝えましたし、ミサイル発射後も、日本国内で、またニューヨークの国連安全保障理事会での共同行動を通じて、緊密な連絡をとりあっていました。

6.米国の指導者の間ではこれからの同盟関係は日本より中国という声があると一部の報道でありましたがそれについてお聞かせください。

 私もこうした報道を目にしたことがありますが、実のところ、そのような報道は理解に苦しみます。はっきり申し上げますが、米国、日本、中国の3国間に同盟関係はひとつしかありません。それは日米同盟です。米中関係は複雑で、急速に進展しています。米国が、気候変動や軍事面の透明性、あるいは経済といった広範囲にわたる問題で、中国に関与するのは当然のことです。日米関係はこれとは全く異なります。なぜなら、日米両国は、言論と報道の自由、人権、民主主義、市場経済、法の支配など、共通の価値観を共有しているからです。これらの価値観は日米両国の長い歴史のある伝統に深く根ざしており、こうした価値観に基づき、日米両国は幅広い分野で地球規模の協力を行なっています。

 そうした報道内容を読むと、これらの記事を書いた人たちは、米中関係の改善はすべて、日本の犠牲の上に成り立つと感じているのではないか、という印象を受けることがあります。私たちはこれを国際関係に対するゼロ・サム的なアプローチと呼んでおりますが、これは全く事実とは異なります。米中関係の改善は日本の利益にもなります。これは日中関係の改善が米国の利益にもなるのと同様です。こうした2国間の関係改善が地域のより大きな安定と繁栄、そして広範囲の問題での協力の強化につながるからです。

7.JCメンバーを含めた日本の若者に期待を込めたメッセージをお聞かせください。

 今日ここでの議論が証明しているように、日米安全保障条約と日米地位協定を土台とした日米同盟は、これまで50年間にわたり、日米両国のためにとても役立ってきました。また、今日私たちが享受している平和と経済的繁栄に重要な貢献をしてきました。しかし、同時に、同盟が提供する利益はタダというわけにはいきません。日米いずれも、安全保障条約に基づいて、両国の同盟が適切に機能するために果たさなければならない義務を有しています。時折感じることですが、日本での日米同盟に関する論議では、日本側の負担ばかりが注目されすぎ、米国側の負担や日米双方が同盟から受ける多大な利益という点が見過ごされているのではないでしょうか。

 JCの皆さんは日本の将来の指導者となる存在であり、その行動力と起業家精神はよく知られています。私は、皆さんが今後も、強い経済をつくるために引き続き貢献すること、そして皆さんのそうした努力からほかの人たちが刺激を受けることを期待しています。また、日米同盟についてじっくりと考え、この同盟関係により日米両国が利益を受けていることを認識していただければと思います。

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