Z Notes Blog by Jim Zumwalt
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起業家の再挑戦

(2010年8月17日)

 アンと私は先日、東京にあるお気に入りレストランのひとつ「ノブ・トーキョー」に行ってきました。その夜、アンと2人でこのお店に足を運んだのは、特別な楽しみがあったからです。このお店のオーナーシェフ、松久信幸さんがアメリカから一時帰国中だったのです。アンと私が「ノブ・シェフ」にお会いしたのは、米国産の食材を日本に紹介してきた松久さんの努力と、日米の食文化の架け橋として彼が果たしてきた役割をたたえ、米国大使館が松久さんを「アメリカ食品名誉親善大使」に任命して表彰した昨年以来のことでした。「再挑戦の機会を私に与えてくれたアメリカには本当に感謝しています」。白のスパークリング・ワインを飲みながら、松久さんはそう話してくれました。

 「私の人生最悪の日は、アラスカ州のアンカレッジにあった自分の店が全焼してしまった時でした」と、松久さん。その半年前、松久さんは希望に胸を膨らませて日本を発ち、米国の地を踏みました。理想のレストランを実現するために借金して、店の内装を自分で設計し、メニューを考え、食材の仕入れ先を確保し、従業員を教育して、半年間というもの昼も夜もなく働き通しでした。やっとのことで新規開店にこぎつけたと思ったら、そのわずか50日後、お店が全焼してしまったのです。

 その後、松久さんは友人に勧められてロサンゼルスに移り、そこで再び働き始めました。著書の中でも述べているように、アンカレッジで失敗に終わった店の借金を抱えていたため、松久さんにとっては「ゼロからの再出発」ではなく「マイナスからの再出発」でした。それでも、ロサンゼルスで始めた彼のお店がその素晴らしい料理と質の高いサービスが評判を呼ぶのに、さほど時間はかかりませんでした。開店して2年が過ぎるころには数々の賞を受賞するようになり、「フード&ワイン」誌が松久さんを全米ベストシェフ10人のひとりに選んでいます。

 今回、アンと私は、松久さんの創作料理のひとつ「ソフトシェルクラブロール」という巻きずしを食べてみました。脱皮直後の殻が柔らかいカニを油で揚げた「フライド・ソフトシェルクラブ」は、米国東部のチェサピーク湾で生まれた有名な料理です。松久さんは、この典型的なアメリカ料理に和食の手法を取り入れ、揚げたカニと一緒にアボカド、トビウオの卵、アサツキ、ゴマをシャリとノリで巻いてすしにします。その外側をキュウリの薄切りで包んだこの巻きずしは、さっぱりとした風味です。

 このスシロールやほかの料理を堪能しながら、アンも私も、アメリカが松久さんに再挑戦の機会を与えることができて本当に良かった、と思いました。この機会を最大限に生かした松久さんは、実にすばらしい才能を開花させ、日本料理とアメリカ料理の粋を融合させた革新的な料理の数々を生み出しています。

ではまた次回。

ジム

COMMENTS

ジム様

ソフトシェルクラブ私も大好きです。某イタリアンレストランで、から揚げにしたものがでています。お米で巻いたものは食べたことはなく、ぜひ食してみたいとおもっています。私はてっきり素材はイタリアの物だと思っていました。チェサピーク湾でも捕れるのですね。マイナスからの松久さんの出発それを可能にしてくださったアメリカと松久さんのご努力に乾杯!

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